大判例

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名古屋高等裁判所 昭和31年(う)1315号 判決

原審は本件犯行当時被告人は心神喪失の状態にあつた旨の弁護人の主張に対し、被告人は本件犯行当時その責任能力に影響すべき程度の精神障碍は存在しなかつた旨判示し右弁護人の主張を排斥した。よつて審案するに、原審が取調べた証拠によれば本件犯罪が原判示の如く殺人者の心理をテーマにした創作を企図し、その心理を実地に体験しようとの異常な動機により犯されたところの他に殆んど類例を見ない事案であるが、原判示思想を精神的支柱として本件犯罪を犯したものであつて、そこに劣等感意識に基く自己中心的、自己誇示的な異常性の影響のあつたことを観取し得ないこともないが、原判決が詳細に説示する如く、右異常性は正常域を逸脱した軽微なものであつて、自己の行為の道義的価値を理解する能力若しくはその理解に基いて行動する能力を全然欠如し、又は著しく減退しているものと認めることができないから、原判決が心神耗弱乃至心神喪失を認定しなかつたことは相当である。原判決が所論の如き鑑定の結果を採用しなかつたとしても、既述の如く被告人が本件犯行当時責任能力を有していたことは之を認めるに難くないから、論旨は徒に原審裁判官の専権に属する事実の認定を争うものであつて、理由がない。

(裁判長判事 吉村国作 判事 柳沢節夫 判事 中浜辰男)

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